彼岸花 :KUWAHARA ひと の記憶ほどあてにならないものはない。 たんに忘却するだけならまだしも ひと は自分に都合の良いように記憶を綴る。 ひでりの夏 雨にくれる夏 どんなにか猛暑であっても 宮沢賢治のサムサノナツであってすら 硬い土の表面を割って 伸び出す緑の花茎をならびそろえ お彼岸に朱い花をひらく ひと が捨ててしまった 自然の摂理 来る年 来る年 ふるい記憶をおびやかす 朱い彼岸花