つばめ来る
春は兆して
やがて かしましくも子育て、
そして、颯爽と、炎暑を飛翔する。
ゆるやかに波立つ
砂浜の湾をみおろすように
岬のホテル
月にきらめく
なみがしらは
いく百 いく千
消えることも
消すこともできないで
曳きずる
愛憎のかずかず
窓をあければ
手にふれる愛のはだざわり
ある日
風がたち
忽然と
岬から
つばめがきえる
風のかたみに
みおろす
海に月はきらめき
もとめる
おもかげの
影すらもなく
はぐくまれた
春の兆し
あけくれた愛の兆し
颯爽と飛翔しあったことすらも
ひとつとして
のこされることもなく
いく百 いく千
なみがしらは
無心に月にきらめく