寒気がおしてきて、晴天になった。
晴れた夜のおかげて、雪がしまり、アイゼンが快適に利き、順調にコースをこなすことができる。
この時期、雪面に映えるブナの新緑の眩しさに魅せられ、あちこち、アンテナをめぐらすのだが、週末と雨天とがかさなったり、雪がなくなったりと、昨年は、まったく、不調だった。?
ナラやクヌギの雑木をぬけると、ブナの林、この時期、ちょうど、残雪の高度である。
ブナの植生的な特性から、厳冬期の登山などでは、このブナ林を、ひとつの目安にして行動を策定することが多い。ラッセルの進捗や気象の読みなどで、雪洞を掘るか、稜線にぬけるか、沈澱するか、それとも、運び上げた荷物を背負って登頂を断念するか、ブナの林をながれる地吹雪の様子を見ながら決定する。そうしたこともあってか、ブナの林には、一種、独特の想いがかさなる。
しばらく、山に縁がなかったこともあって、今回、ギヤを一部、新調した。スキーでも、驚愕したのだが、山装備の革新にも眼をみはるものがあった。アイゼンワークが、とても、スムースである。靴も、コバつきながら、フィット感が抜群で、動きに無理がない。初めて使ったストックも、従前の登山歩行のイメージを一新させるものがある。逆に考えれば、それほどに、ながく、山から離れていたことになる。
新緑のブナを観ながら、すでに、梅雨のなかの雪渓の登攀に心は動いている。