雪国は、雪解けを追いかけるように山野に花が咲きそろう。降り止む雪のなかで咲き出すマンサク、それを追いかけるように辛夷が咲きだし、雪崩れてあらわれた斜面には、カタクリ、ショウジョウバカマ、一呼吸して、キクサキイチゲ、イチリンソウなどがそれそれの美しさを競うかのように次々に咲きだし、春を告げる。
長い雪の日々から真っ白な雪原を割ってあらわれる黒い大地のぬくみ、ありとあらゆるものの躍動を肌に感じながら、子供達は、その、春の兆しをおいかけ、山野をかけまわる。幼い日々に享受した春の躍動は、それぞれに個々人の原風景となって、なににも代えがた
い精神の核になっている。