鳥のように自由にありたい…Free as a bird

桑原特許事務所 - 鳥のように自由にありたい…Free as a bird

むぎばたけ :KUWAHARA

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小麦の出穂するこの季節、心のうちに残るある風景をさがし求めてさすらう。
すっきりと穂を揃える青々とした麦畑に、いつのころからか、何とはなしに青春がかさなる。

真っ白な雪国からトンネルをぬけて、最初に驚かされるのは、北風の土埃の舞う畑一面を青々と覆う麦だった。
そして、春の陽射しに、いっせいに、青茎を伸ばし、出穂する…まるで、それは、パンドラの筺のいちご白書…悠々と流れる利根川、郊外の農家の放蕩息子と、緑の風にふかれて堤を散策する。

春を過ぎれば、汗ばむ、麦秋…利根川べりの麦畑、そこに棲む放蕩息子、ささやかな心象ながらも、東京人に独特な小津監督風「麦秋」を、そこはかとなく、イメージすることができた。

日本が、まだ高度経済成長の夜の明ける前、小津は、その「時代」を、さりげなく切って、その独特なカメラ目線を駆使、原節子演じる紀子と父親との平凡で日常的な葛藤を、ひとつの物語にしあげている。

「時代」は、様変わりしてしまった。様変わりをしてしまったけれど、私のなかの「麦秋」は、そのまま、残っている。
それが、小津の作品なんだなって最近、思うことがある。

連休二日目、武蔵野の地に、小津の「麦秋」にふさわしい麦畑をさがし歩いてみる。