青春 :KUWAHARA 登山がブームだった時代、谷川岳南面は訪れる者もすくなく、東面の喧噪を避けて、じっくり山を愉しむには、うってつけの山域だった。 長い渓谷の遡行、ゆたかなブナの林にテントを張り、ながいながい時間をかけて、登攀するルートを模索しあう。そんな青春を、ともにしていた友人が亡くなった。ガスをよびこむ俎嵓は、むかしの、まんま、まもなく紅葉の始まる季節である。