昨日、朝の晴天に誘われるように北をめざした。
懐かしい新緑の風景が新幹線の車窓からとびこんでくる。
ニコニコ共和国が日本国に統合されてから、かれこれ、10年がすぎるらしい。ジーンズの尻ポケットに、円と交換した分厚いコスモ紙幣をおしこみ、ゆきつけのカフェに、そしてラテンのリズムに身をゆだねる新緑がまぶしかった。
?もう、二度と足を運ぶことがないだろう、そうして、いったんは閉じたパンドラの筺のうちに、軽いタッチでおりたった。やや冷たい風ではあるけれど、卯の花月は、やはり卯の花月、軽いジャケットがにあう。
?あてどもなく、新緑の城壁をめぐり、やぐらにいたる。その、やぐらを見おろす丘の縁に、かって、花梨の樹肌はあった。膨らみだす花梨のつぼみを、どちらともなく、ゆびさきでおし、おしきれずにいた遠い日の風景、散り初めて、みどり装う いとまなき うば桜の霞ヶ城は、すでに、陽のかげりの底にしずみこもうとしていた。