峠をこえれば
きみのふるさと
ひなびた山裾の温泉宿
木枯らしは
終日 雪をはこび
終日 ことだまをはこび
うめきながら
夜のとばりにしずもれる
峠をこえれば
さわやかに
きみの瞳にであったのだろうか
峠をこえれば
あざやかに
未来がひろがったのだろうか
阿多多羅山の
そのむこう
吾妻の峰々をこえて
ひとすじに
つづく峠の小径
なぜに
こえなかったのだろう
なぜに
こえられなかったのだろう
きょうは
北の風
きみのふるさとの匂いがする
Category: つれづれの記: 桑原