ひと…は、決して他の誰にも理解して貰うことのできない歴史を綴りながら生き、そして、微塵の痕跡すら残すことなく去ってゆくものらしい。
それでも、大都TOKYOに織りなされる無数のしがらみを生き、眠らない街を魂は流離い続ける。
丘を下りて行く友人を見送る夕刻、TOKYOのビル群に灯がともりだしている。
夢中に生きていた時代、そんな、時代を共有できるものは、存在しえるのだろうか…かいま見ることのできない…ひと…の心を…だから、ただ、無言で彼の背中を見送る。
夜のしじま、つれづれに流すLP、そこから呼び戻される世界、それは、決してパンドラの小函ではありません。
マキの裏窓、ハコ、流れ酔い唄、ダミアの暗い日曜日、ビリー・ホリデイー、奇妙な果実…あの時代、社会に対しても登攀に対しても、全てに対して、心も肉体も挑戦的だった。それに、奇妙に情緒的でもあった。
挑戦し挫折し、愛して別れ、TOKYO流民に埋没しきっていた。
時代は様変わりしてしまった。それが自然の流れ、それを承知しながらも、私は、やはり、私なんだと思う。肉体は、ぼろぼろ、それでも、私は、私の挑戦をし続けてゆくのだろう。