寒あけの節分の豆まき、そうこうしている間に春一番と、今年は春が駆け足のように感じられる。
けれども、あゆみを緩め、ときに地面にすわれば、ちょうどイヌノフグリの咲き出しである。マンサクも、少しくほころびかげん、自然にはさほどのゆるみは無さそうである。
ところで、「イヌノフグリ」って、誰が命名したのか一瞬驚かされるが、路傍の枯れた草々を縫うように春一番に咲き出す可憐で清楚な花は多くの俳人によって詠まれている。
このイヌノフグリ、野原に枯れ草の芽吹くまえに陽をいっぱいに浴び、悠々と葉をひろげ、だれより早くに花をつけて、授粉、実をつけて、夏草のおいしげる間を、ひっそりと眠りにつく。
その可憐さにかかわらず、したたかな生存戦略で、例年、春の到来を告げてくれる。