皮むきを手伝っていると、独特の春の匂いがする。
その匂いから、遠い日の山菜採りが思い起こされる。滑り落ちそうな急峻な崖をへずり、僅かな小枝に身体をあずけ、微妙なバランスをとりながら、目一杯に手をのばし、群れて緑なすウドの根株にすばやく鎌を差し入れる。
あのころは、野生の動物と同じくらいに俊敏だった。遠くにあるウドを瞬時にウドと認識できた。さえずる小鳥、そよぐ風、ほとばしる水、すべてに調和していた。
もう、遠いむかしのことだけれど、きょうのウドのきんぴらが、とても、美味しい。
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